2021年以降、つまりPMP試験の内容が新試験に変わり、PMBOK®ガイドが第7版にアップデートされて以降の模擬試験の得点者のデータを見ると、70%~80%以上の高得点を上げる上位得点者には共通の特徴があることがわかってきました。

このコラムではボーダーライン上の受験生が苦手としていて、上位得点者がクリアする問題の種類を特定し、ボーダーライン上の受験生が、合格ゾーンに突入するための「最速合格のヒント」をご提供します。(前回の続き)


前回のまとめ

模擬試験の結果を分析すると、上位得点者はある種の問題について、2つ特徴があることがわかりました。それは

●『アジャイル実務ガイド』等の狙われやすいポイントで確実に得点している。
●パターン化されたシナリオ問題(類型問題)について 確実に得点している。

一つ目の狙われやすい問題の典型は、アジャイルのフレームワークの基礎知識を問う問題です。PMP試験には単純なキーワードの知識を問う問題は出題されませんが、解答を導き出す上で、キーワードや基本概念を習得していることが前提となっている問題は、必ず出題されています。これらの問題については、「アジャイル実務ガイド®」をはじめ、「PMBOK®ガイド第7版」に対応した日本語のPMP試験の攻略テキストや試験学習書に基づく学習が基本となります。

(対策1)『アジャイル実務ガイド』の内容をしっかり頭に入れておく。

出典:Project Management Institut

さらに注目しておきたいのは、アーンド・バリューなどの計画系の実務知識、測定テクニックに関する問題です。これらについては、PMBOK®ガイド第7版の学習がベースとなります。また、PMBOK®ガイド第6版や関連する参考書も活用できます。

(対策2)PMBOK®ガイド第7版『パフォーマンス領域』の実務知識(計画/測定)を復習しておく。

出典:Project Management Institut

パターン化されたシナリオ問題とは?

それでは、本コラムの本題であるシナリオ問題の類型パターンについてご説明します。
さっそく、問題を見ていきましょう。以下はパターン化されたシナリオ問題(類型問題)の例題です。

※この問題は説明の為に例示するもので本番試験を予想したものではありません。

(例題1)
ある自治体では、大規模災害発生時に学校施設を避難所として想定している。避難所の確保はマニュアル通りに進むことはなく、被災状況によって刻々と変化する。一方、いったん緊急避難場所として指定された後では、通信・電気・トイレなど非常用生活インフラ、居住、炊き出し、着替え、などについてのデプロイ・プロセスに変化はない。最適なプロジェクト・アプローチは次のうちどれか。

(選択肢
A:アジャイル・プロセス群の中に組み込まれた、予測型のデプロイ・シーケンス群。
B:完全に予測型のライフサイクル。
C:予測型プロセス群の中に組み込まれた、アジャイルなデプロイ・イテレーション群。
D:完全にアジャイルなライフサイクル。

この設問は、異なる2つのアプローチを組み合わせる問題です。

一つは避難所を選択するためのアプローチ、もう一つは、避難所の中の生活インフラや必要物資のデプロイのためのアプローチの選択です。刻々と変化する災害発生時の被害状況にすばやく柔軟に対処するために、各避難所の確保については、アジャイル手法が最適です。


一方、一旦施設の確保と設置が決まった後は、デプロイ・プロセスは不変の順序に従います。このステージでは、安定した支援物資のロジスティクスは決定的に重要な要素となります。ステークホルダーは、避難者をはじめ、避難所、地方公共団体、物資提供者、輸送者、ボランティア、NPO、地方公共団体の集積所のそれぞれの業務担当者、管理者です。マネジメントの対象は医療品からカップ麺/下着/発電機/仮設トイレまで物資の要請、避難所到着貨物の荷下ろし、供給履歴管理、車両手配、など多種にわたります。こういった種類の作業のマネジメント手法としては予測型のアプローチが最も適しています。

したがって、正解は、A:アジャイル・プロセス群の中に組み込まれた、予測型のデプロイ・シーケンス群、一択です。

ライフサイクルを選択させる問題の解法パターン

今回、理解しておきたいポイントです。

この図は、PMBOK®ガイド第7版に掲載されているものを元にして作成したものです。

予測型と適応型、のように、異なる2つのアプローチが必要で、どちらかがメインで、どちらかが、サブとして組み込まれるシナリオの問題は、一種の「あるある問題」のパターンです。


開発アプローチを決定づけるのは、成果物とデリバリー・ケイデンスの違いと組合せです。機械的に暗記するのではなく、その成果物は、なぜそのケイデンスで提供することが必須で、なぜその開発アプローチを選択すべきなのか、PMBOK®ガイドを参考に、腑に落ちるまで良く考えてください。記号化された概念としてではなく、アナログ化し、肉体化して(声を出して読む、書く、まとめる)記憶してください。自分自身を納得させられないと記憶は定着しません。
ハイブリッド問題は、どちらのアプローチが主で、どちらが従かについても、十分注意してください。

(対策3)ライフサイクルを選択させる問題は、なぜその成果物とケイデンスの時に、その開発アプローチがベストなのか、自分なりに心底納得してからパターンを記憶。

ライフサイクルを選択させる問題は、本質をつかみ一定の解法をマスターしてしまえば、かなりの確率でサクっと解くことができます。あとは単に応用力を鍛えれば良い、ということになります。いつまでも宇宙のどこかに存在する真理を求めて彷徨う必要はありません。

繰り返しになりますが、成果物、デリバリーのケイデンス、開発アプローチの組合せは、パターン化されています。まずは「PMBOK®ガイド第7版」「アジャイル実務ガイド®」の基本的な内容をしっかり頭に入れて、いくつかのシナリオ問題を解いて応用力を身に着けておけば、本番でもあわてずに確実に正解できるようになります。


ご健闘を祈ります!


(68) 上位得点者が絶対に落とさない問題とは – その2 –
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