PMP試験の代表的なパターンとして、次のアクションを問う問題が出題されます。 今回は、簡単そうでベテランほど意外とつまずく「次のアクションを問う問題」の攻略法について例題付きで解説いたします。


予測型の頻出問題パターンの一つ

「次のアクションを問う問題」には、「あなたはプロジェクト・マネジャーとして何をすべきか」、「次にあなたがとるべきアクションはどれか」、「最初に何をすべきか」、「最適な行動は次のうちどれか」、などさまざまなバリエーションがあります。

ウォーターフォール型(予測型)の問題については、どのような流れでプロジェクトが進んでゆくのかを、いちど、自分で整理してみて、把握しておくことで、本番で確実に得点することができます。
この手の問題は、実務に近いため、ともするとわかっているつもりになりますが、「試験で得点する」という足元のニーズに対応するには、曖昧な知識と根拠の無い自信は大敵。甘く見ないで無駄な失点を抑えましょう。


「次のアクションを問う問題」で求められること

「次のアクションを問う問題」 のバリエーションは、前述のとおりですが、いずれも、正解をアウトプットするためには、
・どのプロセスについて尋ねているのか
・設問の登場人物はプロセスのどこにいるのか
・プロセス・フロー上は次に何がくるのか
について理解していることが必要です。

逆に言えば、最初にプロセスの全体をバクっと理解しておけば、あとは個々のプロセスの詳細に下りてゆくことで回答の道筋が見えてきます。大量に何かを記憶しなければならない、ということではないので「次のアクション」を訪ねる問題は、比較的得点しやすい種類の問題だと言えます。

ここでは2つ、典型的な「次のアクション」問題を見てゆきたいと思います。
まずは、スケジュール作成から。


「次のアクション」問題(例題1)

あなたは、電気自動車用の次世代ナビゲーションシステムの開発プロジェクトのプロジェクト・マネジャーである。現在、チームメンバーと協力して、WBSとWBS辞書の作成が完了したところである。チームメンバーからは、各アクティビティで想定される工数の見積りが提出された。あなたが実施する次のプロセスは以下のうちどれか。

【選択肢】

1.アクティビティの順序設定
2. スコープの定義
3. スケジュールの作成
4. スケジュール・マネジメントの計画

【正解】 

1.アクティビティの順序設定

【考え方】

この問題では、WBS作成からスケジュール作成にいたるプロセスの全体イメージを把握していると、回答は比較的簡単です。

設問では、すでに、WBSの作成が完了している前提となっています。とすると、チームからアクティビティ所要期間の見積りが提出済の段階で、次に行うべきことは、アクティビティ間の関係を特定するプロセス、すなわち「アクティビティの順序設定」のプロセスです。プレシデンス・ダイアグラム法(PDM)などを使って、ネットワーク図を作成する中で、各作業の依存関係(「これが終わらないと、この作業はできないよね」、とか)をチェックし、リストアップされたアクティビティの論理的な順序関係を定義してゆきます。

正解は1

ちなみに、WBSやWBS辞書が入手済である、ということはスコープの定義は既に完了しています。スケジュールの作成は、「アクティビティの順序設定」が終わって依存関係の整理が終わってから着手します。スケジュール・マネジメントの計画は、どうやって管理するか、という話なので、これも既に作成済みのはず。

スケジュール作成までの作業の流れをつかむための、プロセス・フロー図を以下に貼っておきます。
※ 詳細なプロセスの関係については、一度はPMBOK第6版の該当ページ(各プロセスのデータ・フロー図)を確認しておくことをお勧めします。


次も、PMP試験で良く狙われるテーマです。特に変更要求から変更管理委員会を経て変更要求が承認され、実作業に移るまでのフローについては、必ず押さえておきましょう。


「次のアクション」問題(例題2)

あなたの会社は新規参入した長距離通信事業者からスマートフォンの課金システム構築プロジェクトを受注した。プロジェクトの中盤にさしかかったところで仕様の欠陥が明らかになり、クライアントからのクレームとなった。経営者は、あなたをリカバリ・プロジェクトのリーダーに指名した。あなたは早速プロジェクト・ルームに乗り込み、前任者とチームへのヒアリングを実施し、並行してドキュメントを査読し、現在のステータスを計画と比較、分析した。その結果、設計品質に重大な問題があることを確認した。ただちに全チームの実装作業を一旦停止し、関連する箇所と影響度の特定を実施、必要な工数を算出した。その結果をもとに変更管理委員会と役員会にプロジェクトの現状報告と、リカバリ・プランを提出し、予算承認を仰いだ。経営者のトップオーダーでただちにあなたのリカバリ・プランは承認された。あなたが次に実施すべきプロセスはどれか。

【選択肢】

1.プロジェクト作業の指揮・マネジメント
2.プロジェクト作業の監視・コントロール
3.ステークホルダー・エンゲージメントの計画
4.プロジェクト知識のマネジメント

【正解】

1.プロジェクト作業の指揮・マネジメント

【考え方】

今回あなたがリカバリ担当として実施した作業は、全体的な進捗状況をレビューし、各ステークホルダーが現状と課題に対応するための処置を認識し、リカバリにかかるコストとスケジュールを見通せるようにしたことです。このプロセスは「プロジェクト作業の監視・コントロール」です。

あなたが提出したドキュメントは、「作業パフォーマンス報告書」と「変更要求」です。リカバリ・プランは、現状報告とともに変更管理委員会でレビューされ、ただちにトップにより承認されたので、フォーカスはすぐに次のステップに移ります。統合変更管理プロセスの次のアクションは、承認済みの変更を現場レベルで確実に実施することです。承認済み変更をインプットとして次に実施されるプロセスは「プロジェクト作業の指揮・マネジメント」です。

正解は1

「プロジェクト作業の監視・コントロール」は次に行うべきアクションではなく、今あなたが実施しているプロセスです。「ステークホルダー・エンゲージメントの計画」はステークホルダーのニーズ、期待、関心事などに基づいてステークホルダーの関与を促す手法を決定する計画段階のプロセスです。「プロジェクト知識のマネジメント」のアウトプットは教訓登録簿であり組織のプロセス資産の更新などです。プロジェクト立て直し作業の見通しがついてから取り組むプロセスです。なので、1以外のオプションは全部NGです。

変更要求が承認され、実際の作業に移るまでの流れをつかむため、統合変更管理の全体を俯瞰したプロセス・フロー図を以下に貼っておきます。
※ こちらも、詳細なプロセスの関係については、一度はPMBOK第6版の該当ページ(統合変更管理のデータ・フロー図)を確認しておいてください。


このページのまとめ

・PMP試験では「次のアクションを問う問題」がよく出題される
・どのような流れでプロジェクトが進んでゆくのかの全体像の理解が求められる
・いくつかの問題については代表的なパターンを押さえておけば得点は容易である
・尋ねているプロセス、今の作業、次のプロセスを頭の中で整理してから最も確からしい選択肢を選ぶ

「次のアクションを問う問題」は、ちょっと調べてみたところ、スケジュールと統合変更管理だけでなく、ステークホルダー・エンゲージメント、リスク・マネジメント、プロジェクトマネジメント計画書、作業パフォーマンス情報、そしてプロジェクトの終結までほとんどすべてのプロセス群から出題されています。

いずれも、プロジェクト・マネジャーとしての作業プロセス、その順番が頭に入っていないと得点に結びつきません。本番までにぜひ一度、ノートに整理するなどして、見直されることをお勧めいたします。

※ このページの例題は、『リアルタイム模試』に出題された設問から引用し、編集を加えています。


(62)「次のアクションを問う問題」の攻略法
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