PMP(R)試験に合格するためには、シナリオ問題はやっかいなハードルの一つです。参考書を読んでも、なぜ、その解答が正しいのかわからない、なぜその解答にたどりつくのかわからない、問題文を読む限り正しいとは思えない、正解に納得がいかない、などさまざまな声を聞きます。

PMP(R)試験では、プロジェクト・マネジメントの用語を尋ねるような単純な問題はほとんどありません。むしろ、業務課題や状況、役割を意識させてプロジェクト・マネジャーとしての次のアクションを聞いてくるような数行にわたる長文の問題が数多くみられます。

学習レベルをシンプルな階層構造で図示したのが、下記のBloom’s Taxonomyですが、PMP(R)の試験は、Recall(暗記型)の問題はほとんどなく、Application(応用型)のシナリオ問題がメインです。Application(応用型)の問題の特徴は、①まず最初に設定されたシチュエーションを理解し、②最適なアクションやソリューションを評価する、という2つのステップをとることです。単に、学習したキーワードを思い出すだけではダメで、キーワードや重要な概念の理解を前提にそれをどうやって現実のシーンや業務課題に適応し、応用すべきかという判断を要求してきます。

(図)Bloom’s Taxonomy 「学習の為のフレームワーク」
Inside the PMP® Question Writing Process
Mike Griffiths Southern Alberta Chapter
Source:Project Management.com

本項では、やっかいな「長文のシナリオ問題」の解き方について、実際のオンライン模試についてご質問をいただいた内容をヒントに、「長文シナリオ問題」の攻略法を大公開したいと思います!(といっても、シンプルな4つの戦略を頭に入れておくだけなんですが)。
以下の4つのシンプルな戦略で、強い気持ちを持って確実に年内合格を実現してください。

(1)正解は設問を読んだだけではわからないと知る

複数のケースが想定されたり、与えられた情報だけでは断定できない、など設問を読見終わっても必ずしも結論が出ないことがあります。でも、それはそれでいいんです。ほっておきます。
PMIの試験に出題される問題は、最適なものを選べ、最も確かなものを選べ、という形式が多くみられます。つまり、該当するものは複数あるぞ、と言っているのです。

つまり設問の中だけで、完全に正解が特定できないケースが多く、その場合は、ある程度あたりをつけた正解にピン止めして、他の選択肢を除外できる根拠を探してゆくことで正解を見つけてゆく作業になります。
そして、特定はできないが、どっちが正解に近い?を判断するためのヒントも設問の中にあります。

(2)設問中のヒントとなるキーワードやセンテンスを特定する

チコちゃんに叱られる!(C)NHK という番組がありますが、設問は、ぼーっと読んでちゃいけません。一回目はさらっと掴み、2回目は食い入るように読んで、手がかりとなるセンテンスやキーワードを慎重にチェックします。まれにダマシもありますが、おおむねひねくれた問題は少ないです。隠されたヒントを察知できるあなたの知識と理論と、プロジェクト・マネジャーとしての偉大な常識を、設問の向こう側から出題者がジッと見つめています。

(3)確からしい方を選んでおく

それでも確信が持てず、どっちも正しくね?という2つの選択肢がある場合は、理不尽さに憤慨するよりも、さっさと、より適正なもの、より正確なもの、よりPMIマインドに沿っているもの、を選択しておきます。その時、なぜそっちが正しいと考えたかについて、既に身に付けた知識を根拠に自分なりの筋道だった理由を考えます。メモをしておいて、時間があればあとで戻って検証すると正解率はアップします。最終的に結論が出ないまま時間切れ、は最低の結末です。空白にせず、確からしいと判断した方の回答を埋めておけば正解となる確率は50%以上です。”以上”、というのは極度に集中した状態での直観はけっこう正しいから。

(4)プロジェクト・マネジャーとしての偉大な常識に従う

PMBOK(R)ガイドのどこにも書いていない、ツールと技法にも含まれない、という問題が結構あります。職業倫理に関する問題などは、特に、どこに書いてあるの?と突っ込みたくなるような問題も結構あります。PMP(R)試験はPMBOK(R)ガイドブックがヒントになる問題が多いですが、前述のとおりRecall型ではない、そこに書いてあることをどれだけ正確に記憶しているかをチェックする試験ではありません。

あなたが学習してきた知識の引き出しのどこにも該当する断片が見つからない時は、偉大な常識に従う、という奥の手を使います。自分の常識ではないですよ。プロジェクト・マネジャーとしてどんな行動をとるべきか、について考え、正解と思われる選択肢を選びます。その際に、すでに身に着けた知識や理論を根拠に、自分なりの筋道のたった理由が裏づけにあると、まちがいなくPMP(R)資格合格が一歩近づきます。

実際に想定問題を例にご説明します。


【例題1】

総合住宅機器メーカーのビーンズトーク社は、衛生陶器メーカーのイースト陶器(EC)社買収のタイミングで会計システムの再構築を行うことになった。今回はビーンズトーク社の現行機能への各社システムの統合が主要な目的であり新機能による拡張は第二フェーズで実施する。プロジェクト期間は1年間とし2022年1月より、グループ全社が一斉に新しい会計システムに統一運用される計画である。今回のシステム構築はビーンズトーク社の子会社であるビーンズトーク・ソリューションズ(BTS)社が担当する。BTS社は既存システムの運用保守を委託しているパシフィック・ソリューションズ(PS)社に開発プロジェクトを一括で発注した。あなたは、PS社のプロジェクト・マネジャーである。

今回は、現行踏襲プロジェクトであり、「既存機能をそのまま載せ替えるだけだから」というBTS担当者の説明に基づき、単体テストのテストシナリオと試験書は現行システムで使用したものを流用し、メインストリームの機能のみ通すことで作業のムダを省くことにした。ところが、テスト結果報告書を精査したところ、予想をはるかに超える不具合が発生していることが判明した。

単体テストと結合テストはクリティカル・パス上にあるため、あなたは着手した結合テストをただちに中止することを全メンバーに伝達し、単体テストにさかのぼって全プログラムについてもう一度やり直すことを決めた。
新しいシステムでも保守案件を継続受注したいPS社にとってこのままだと費用負担は避けられそうもない。コンティンジェンシー予備は要件定義書の再整備タスクで使い切っていた。追加費用の打診をしたところ、いまさら追加作業の見積りは了承できないとのBTS社との回答だった。しかもグループ会社の経理に影響するため契約書で合意された2022年1月のカットオーバーの日程は必ず守ってほしい、と念押しされた。あなたのとるべきアクションとして最も適切なものは次のうちどれか。

【選択肢】

1.部門長の承認の上、クラッシングによりプロジェクト全体のスケジュールを再調整し単体再テストの準備にとりかかる。
2.ただちに単体テストの再実行の準備を実施し、ファスト・トラッキングにより単体テストと結合テストを効率よく実施する。
3.山崩しの手法で単体再テストを前提に積み上げた工数をもとにピークとなる月を把握し、余裕のある月へ工数を移動する。
4.クリティカル・チェーン法によりあらかじめ確保した合流バッファを活用し、プロジェクト全体のスケジュール調整を行う。

【正解】

1.部門長の承認の上、クラッシングによりプロジェクト全体のスケジュールを再調整し単体再テストの準備にとりかかる。

【考え方】

設問の記載内容から、
・単体テストと結合テストはクリティカル・パス上にあり、かつ
・カットオーバーの日程は必ず守る、
という前提で考えると、ファストトラッキングの選択の可能性は低いと考えられます。(クリティカル・パス上にある作業になぜファストトラッキングの技法が使えないか、という説明は省略)

他の選択肢は、資源の平準化で解決できる状況ではなく、スケジュールバッファも使いきっている(コンティンジェンシー予備は、コスト、スケジュール両面で、このケースはスケジュール)ため、脱落します。


もう一つ例題。

【例題2】

ビーンズ化粧品(B社)は独自の皮膚科学の研究成果を製品に反映しマーケットから高い支持を集めてきた。しかし業績を支えてきたインバウンド需要がここへきて急激に落ち込んでいる。同社のマーケティング戦略室は販売コストの低いインターネット通販をB社のオンラインサイトで開始する決定をし、同社の基幹システムの構築・運用を担当するアジア・パシフィック・ソリューションズ社(A社)に対し見積り依頼を行なった。あなたはA社のプロジェクト・マネジャーとして、マーケティング戦略室のディレクターからヒアリングを行い見積書を作成した。見積り書を提出した結果、B社から想定価格より高く、少なくとも提示価格よりさらに20%の減額が必要であると連絡してきた。A社としても、案件が減少するこの時期においてはできる限り受注件数を落としたくない。あなたがとるべきアクションとして最も適切なものは次のうちどれか。

【選択肢】

1.レコメンデーション機能を今回のスコープから除外し次回に回すことを提案する。
2.コストの高い開発要員を単価の安い開発要員と入れ替え、テスト工程を短縮する。
3.会議費、節電、コピー削減などプロジェクトを通してのコスト削減努力で原価圧縮を行う。
4.事業責任者とミーティングを行い減額時のマネジメント予備費からの補填を依頼する。

【正解】

1.レコメンデーション機能を今回のスコープから除外し次回に回すことを提案する。

【考え方】

プロジェクト・マネジャーとしてまず行うことは、機能のカットや組換え、スコープの縮小などによるカウンターの提案です。今回のリリース対象に含めなくても良い機能を次回に回すことができれば、プロジェクトの受注総額を縮小せずに、本契約の提示金額を大幅に削減する可能性が出てきます。レコメンデーション機能は、消費者の購買意欲を刺激しますが、購買機能を実現する上で必須ではありません。ここを次回にまわす方向でクライアントに逆提案を行うことが、最も妥当な方法だと考えます。

ちなみに他の選択肢は、コストの高い開発要員を単価の安い開発要員と入れ替え、テスト工程を短縮することは、計画した製品の納期や品質をリスクにさらすことになります。節電などによるコスト削減で20%に相当するコストカットは現実的ではありません。上位マネジメントへのエスカレーションはプロジェクト・マネジャーとして交渉の結果、解決の可能性が無い場合に最後に検討する選択肢です。


4つのシンプルな戦略。なーんだ、そんなことか、という方もいらっしゃるでしょうし、ほほー、なるほどねー、と肚落ちする方もいるでしょう。いずれにしても、長文シナリオ問題を前にして、内容がほとんど頭に入ってこないで時間ばかりが過ぎて、最後は4択問題のギャンブルになってしまうパターンは避けるべきです。ここまでやったんだ、という自分が準備してきたことに対する率直な自負と、自分なりのゆるぎないシンプルな戦略をもって臨むことが大切です。


※ 設問の例は7月度のオンライン模試から抜粋して編集したものを使用しており、実際の出題内容とは異なります。

【新】「長文シナリオ問題」の攻略法
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