品質マネジメントは他の知識エリアのプロセスと比べて、最もシステム開発の”成果物”に近いテーマを扱います。とは言っても、お金の管理やスケジュール管理と比べて、という話であって、マネジメントのテーマであることは同じです。コスト・マネジメント、スケジュール・マネジメントは「そういうものだ」と割り切れば良いのですが、ソフトウエアの品質をPMBOK側から学習するのは靴の上から足を掻いているようなもので、逆に強いストレスを感じるかもしれません。

ソフトウエアのテストの知識はJSTQBの試験を受けることで、シンプルなフレームワークと用語のセットを記憶できます。直接PMP試験には出題されることはないかもしれませんが、自分の仕事の位置づけを再確認したり、チームリーダーとして小規模なテストリードを行う上で、大変役に立ちます。

さて、品質マネジメントの最初のITTOは品質マネジメント計画です。品質管理の計画プロセスは、品質マネジメント計画だけです。
スコープ、タイム、コスト、といった主要な知識エリアの計画プロセスには、収集、分析、設定、定義、見積といった作業プロセスがテンコ盛りになっていたのと比べると、素っ気ないくらいです。

「品質マネジメント計画」とは、要するに成果物の”品質要求事項”と”品質標準”を定めて、それを遵守する方法についてドキュメント化するプロセスです。”品質要求事項”が満たされない場合、単に、ITシステムの範囲にとどまらず、ビジネスに甚大な影響を与える恐れがあります。ITが経営そのものと一体化しつつある今日では、品質管理は重要な経営課題の一つとして認識されており、多くの企業では経営会議のアジェンダとして取り上げられています。

品質マネジメント計画の変更は、他の計画プロセスに影響を与えます。例えば、成果物が所定の計画を満たしていないことが判明した場合の品質強化に関わる追加投資は、コストやスケジュールへの影響に留意すべきです。

(インプット)
・プロジェクトマネジメント計画書
・ステークホルダー登録簿
・リスク登録簿
・要求事項文書
・組織体の環境要因
・組織のプロセス資産

絶対的な品質、というものは無く、誰がどんなビジネス目標を達成する為に、という視点を常に念頭に置く必要があります。つまり”品質とは、誰の為の品質か”(ジェラルド・ワインバーグ)という視点が重要です。やみくもにテストすることが品質活動ではない、ということです。誰が⇒ステークホルダー登録簿、どんなビジネス目標⇒要求事項文書

(ツールと技法)
・費用便益分析
・品質コスト
・QC7つ道具
・ベンチマーキング
・実験計画法
・統計的サンプリング
・その他の品質計画ツール
・会議

「QC7つ道具」は、品質保証プロセスで出てくる「新QC7つ道具」と一緒に覚えてしまいましょう。

(アウトプット)
・品質マネジメント計画書
・プロセス改善計画書
・品質尺度
・品質チェックリスト
・プロジェクト文書更新版

品質マネジメント計画のアウトプットで重要なポイントは2つ。1つは品質マネジメント計画書そのものを作ること。これは当たり前ですが、2つ目は品質尺度(メトリクス)です。

品質尺度(メトリクス)は、品質目標としたプロジェクトまたはプロダクトの属性と、基準となる実際の測定値です。品質マネジメント計画プロセスで定義された品質指標(メトリクス)は、要件定義・設計工程、テスト工程と監査工程で使用されます。

要件定義・設計工程の「レビュー指摘密度」や「レビュー工数密度」、テストケース・テストシナリオに対する「レビュー指摘密度」、ソースコードに対する「静的コードレビュー指摘密度」、テスト工程では「欠陥密度」や単体テスト網羅率(C1)などが代表的な品質尺度として挙げられます。

残存バグ消化とバグ累積曲線をそれぞれ計画線とセットで可視化したグラフがPB曲線です。”一粒で4回美味しい”ツールで、フェーズ判定や出荷判定会議などで広く利用されています。こちらのサイトでわかり易く説明されています。

なお、”品質”と”等級(グレード)”は混乱しやすいので注意。”品質”とは「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」を言うのに対して、等級(グレード)とは、「同一用途でも、技術的特性が異なる成果物に定めた区分」であり、「設計上で予め意図されているもの」とされています。
品質要求事項を満たせない品質レベルは問題となりますが、”低い等級”自体は必ずしも問題となることはありません。例えば、「百均の○イソーiPhone6対応充電専用USBケーブルはリバーシブルでは無い(グレード)が、十分使える(品質)」と言う時、この製品のグレードは低いものの、十分な品質要求を満たしていることになります。

ちなみに、PMBOKの品質管理の基本的な考え方は、ISOのソフトウエア品質規格と互換性をもたせようとしています。ISO/IEC9126から、新しく置き換わったISO/IEC25000シリーズ(SQuaRE)については色々な資料が公開されています。一度はSQuaREのポイントを説明した資料に目をとおしておくと良いかもしれません。




※ 本資料はプロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK® Guide)第5版 (A Guide to the Project Management Body of Knowledge)に準拠しています。PMI, PMBOK Guide, PMP は、プロジェクトマネジメント協会(Project Management Institute,Inc.)の、Microsoft ProjectはMicrosoft Corporationの登録商標です。

(42)品質マネジメント計画ITTO